歯周組織再生療法
歯周組織再生療法とは
歯周病が進行すると、歯を支える歯周組織が破壊されます。歯周病に対して、歯周基本治療や歯周外科処置を行うことで、歯周組織の健康を取り戻すことが出来ます。しかし、歯周組織は破壊される前の状態には戻りません。
この破壊された歯周組織を再生させるのが、歯周組織再生療法です。
治療を受ける前に
歯周組織再生療法によって、健康な歯周組織を取り戻すには、数か月から1年程度の時間が必要になります。
また、歯周組織が再生する期間および程度は個人差があり、歯周病の進行具合によっても異なります。このため、治療後のスケジュールも患者さんによって異なります。また、治療効果を発揮するためには、以下の1~4が必要になります。
- 非喫煙者
- 歯周病は細菌による感染症であることへの理解
- 自宅での正しいプラークコントロールの実践
- 治療の一部としての歯科医院でのメインテナンスの継続
エムドゲインとGTR
歯周組織再生療法として、エムドゲインとGTR法という方法があります。
どちらの療法も適応には条件があり、全ての方に適応するものではありません。特にGTR法による手術は吸収性人工膜メンブレンを用いるため、エムドゲインに比べると術式が難しいです。また、メンブレンが露出するなど感染のリスクもあるため、現在ではエムドゲインのほうが多く用いられるようになっています。
エムドゲインとは
2002年に厚生労働省の認可を受けたエムドゲインは、歯周病で溶けてしまった顎の骨や歯根膜などの歯周組織を再生させる安全性の高い歯周組織再生療法です。エムドゲイン・ゲルという豚の歯胚組織からつくられたタンパク質の一種を歯根の表面に塗ることで、歯が生えてくるときと同じような環境をつくり歯周組織の再生を促します。
エムドゲイン有効性と適応
エムドゲインの最大のメリットは、歯周病によって失ってしまった歯周組織(歯槽骨や歯根膜など)を再生させることです。これによって、適切なブラッシングがしやすくなり、歯の周囲や根元にプラーク(歯垢)や歯石が溜まりにくくなるため、歯周病の進行や再発のリスクを低減できます。
また、歯周病によって歯茎が下がり、歯が長く見えてしまうケースがあります。この症状に対して、エムドゲインで顎の骨を再生することで、歯茎も盛り上がるため見た目の問題やむし歯のリスクが改善されます。
エムドゲイン治療の流れ
- 麻酔をして、治療部分の歯茎を切開します
- 歯根面に付着したプラーク・歯石を除去します
- 骨が失われた部分にエムドゲイン・ゲルを塗布します
- 切開した歯茎を縫合します
- 術後1~2週間で抜糸します
- その後、経過観察を行っていきます

GTR療法とは
GTR(歯周組織誘導法)は、骨がなくなってしまった部分に人工膜メンブレンを挿入することで、歯周病によって溶かされた顎の骨や歯根膜などの歯周組織を再生させる歯周組織再生療法の一種です。
一定期間メンブレンを入れておくことで、歯周組織の増殖を邪魔する歯茎の侵入を防ぎながら、歯周組織を再生します。
GTR治療の流れ
- 麻酔をして、治療部分の歯茎を切開します
- 歯根面に付着したプラーク・歯石を除去します
- 骨が失われた部分を人工膜(メンブレン)で覆います
- 切開した歯茎を縫合します
- 術後1~2週間で抜糸します
- その後、経過観察を行っていきます

引用 臨床歯周病学:医歯薬出版 吉江弘正、他